目次
- 丁未の乱(ていびのらん)(587年)
- 古代の戦いは「鉄を制するものが覇権を制する」のが定石
- 秦氏の力の源泉は近江製鉄(国産の鉄)
- キツツキの伝説
- 以和貴 (和を以て貴しとなす)
- 「もののふ」から「もののけ」へ
- 宮崎駿監督『もののけ姫』
- アラハバキ解・汎日本古代信仰の謎に迫る(2020年12月、連載始めました)
本文
丁未の乱(ていびのらん)(587年)
「輸入の鉄」によるものづくりの力を源泉に、ヤマトの祭祀とともに、警察力&軍事力を掌握していた物部氏。
一方、新興の秦氏を参謀に、諸豪族連合で戦いに臨んだ太子軍。(現在、聖徳太子として知られる上宮太子(上宮皇子)のこと。用明天皇の息子)
双方互いに最新の武器を使い、戦いは凄惨であったと思われます。
古代の関ヶ原といったところでしょうか?
負けた方が滅びる天下分け目の戦い
日本書紀の『丁未の乱』として知られる戦いは、崇仏派の蘇我馬子(大臣)と排仏派の物部守屋(大連)の宗教戦争というのが定説であるが、私の認識は半分違います。
結局、太子軍が勝ち、実質的に 古墳時代は終わり、飛鳥時代が始まります。それほど、古墳時代の物部氏の力は強大でした。
古代の戦いは「鉄を制するものが覇権を制する」のが定石
戦いは陸上戦、勝敗の原則はシンプルで、ひとりで何人を排除できるか?です。
優れた鉄の武器は、実戦での損壊率が低くメンテナンス性もよい。
連日の白兵戦では、これが圧倒的な差になるります。
レベルの高い鉄はレベルの高い生産組織、技術、原料が支えます(※もののけ姫。記事末)
この点で、秦河勝(はたのかわかつ)がカギを握っていたと考えています。
太子の参謀役として見え隠れし、当時の秦氏の頭領とされた人。
秦氏について、理解している範囲は次の通り。
赤穂(兵庫県)から河内の津(大阪)の上町半島南部に定着、当時の淀川河口の摂津、山城(京都)、近江と流域を遡りつつ広がっていった「もうひとつの」ものづくり集団。
赤穂時代以前のルートは不明。渡来系氏族とされる。
河勝のものと伝承される墓が、大阪府寝屋川市太秦(うずまさ)にあります。
広隆寺を拠点に平安京遷都(794)の協力者であったことは知られています。広隆寺は遷都時の御所の造営に伴い、現在の京都市太秦(うずまさ)に移転したとされます。
祇園祭の始まりには、秦氏が絡んでいると考えられています(タペストリーの世界万国性など)
近江街道の湖南、湖東の一帯には秦一族が多く定住し、鉄鉱石を原料にした近江製鉄(たたら製法、鋳物製法)を発展させていました。
秦氏の力の源泉は近江製鉄(国産の鉄)
(興味のある方は「近江製鉄」でググってください)
凄惨な戦いであったゆえに、勝者(太子)は敗者を「もののふ(武士)」として敬い、その鎮魂のために四天王寺を建立しました。
物部氏は一千年の伝統ある名門。生き残った眷属(けんぞく)も多い。新しい国造りのために働いてもらわなければならない。
最初の場所は、河内・物部氏の聖地近く、物部氏の居館のあった森ノ宮。(元四天王寺。鵲森宮(かささぎもりのみや)・森之宮神社)
しかし二十数年後に現在の夕陽丘に移設されました。
キツツキの伝説
新しい国のシンボルとして、海外からの上陸者に威容を示すオモテの目的とは別のウラの理由と考えています。
その手掛かりになるのが、このブログの二回目で紹介した四天王寺さんの「白鷹の止まり木」と「守屋祠」。
長く続いた物部氏の支配が消え、社会が激変したことで、騒動や動乱が相次ぐ不安定な時代に入ったと思われます。
アイデンティティを喪失した人たちも多かったことでしょう。
現代人の私ですら、この時代を、すでに古代ヤマトとは書けないほどの変化です。
以和貴 (和を以て貴しとなす)
わざわざ口酸っぱく、公布しなければならないほど、国体維持にかかわる事態が起きていました。
群れ成すキツツキにコンコンコンコン・・・
つつかれた木のように、権威が立ち枯れするのを恐れた誰かが、物部氏はタタる、怨霊だと言い出しました。
物部氏は祭祀にかかわる宗教(祈祷)家でもありました
滅びてもなお、物部氏が変化(へんげ)させられた瞬間。
後に菅原道真公が怨霊とされ、鎮めのために(コト)、大宰府天満宮(モノ)が建立されたのと同じ。
古来、大たたら場には嫉妬深い金屋子(かなやこ)の女神さまが居られるという信仰があり女性は近づかなかったが、物語では女性の職場として設定。
ものづくりの高度にシステム化された山の仕事場、鉄とたたらが重要なテーマとして登場しました。
日本古代のある時点をオマージュして創られたのでしょうか。
ビジネスライクなジコ坊は秦氏っぽい感じ。権力には近づくが代わるつもりはない。それが長生きの秘訣。
一方、必死に古い時代に生きようとしながら時代遅れになってしまったイノシシ軍団。モデルは誰でしょう? あれは悲しすぎる。
アラハバキ解・汎日本古代信仰の謎に迫る(2020年12月、連載始めました)
当ブログは日々のテーマで、多いときは十数話シリーズで書いていますが、どうしても書きっぱなしになりがち。そこで、2019年4月からブログを始めて、大きなテーマも見えてきたこともあり、長めのルポ風は投稿サイトで、別途、作品化することにしました。
当ブログと重複する内容もありますが、過去記事の内容と、1ブログネタにならなかったり、逆に書き切れなかった情報をあわせて再構成しております。
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