前回の続き。
天理参考館の縄文時代コーナー(常設展示)
*注意;参考館の縄文時代・画期は紀元前300年まで。ここで紹介する展示品は紀元前1000年~同300年の遺跡からの出土品。近年、紀元前1000年を弥生時代の開始とする有力になっているが、西日本より稲作伝播が遅かったと考えられる東北地方に適用すべきかどうかは議論がある。
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遮光器土偶(津軽の地元ではシャコちゃん)
ご存知の方は多いと思うが「遮光器」とは強い太陽光と雪の照り返しから目を守るためにエスキモーが使う木の板に細いスリットの入ったサングラスのようなもの。
装着したときの見た感じが似ているので「遮光器のようなものを付けた土偶」というところから名付けられた。
近年では、トータル約二千体の出土品の(古いものから新しいものへの変化をみる)編年研究から、まるみのあった目が、典型的なスリット状に変化したことがわかり、エスキモーのサングラスとは関係がないというのが定説になっている。
下の写真。上段から下段に見て行くと、そのような目のデザインの変化がよくわかる。
特に展示に説明がなかったが、香炉のデザインは遮光器土偶の顔と似ている、というか、ほとんど同じ。なぜスリット状になったのか?「説はいろいろあるけど、自分で見て考えてね」という意図が込められた展示だと思った 笑
面白いのは北海道余市町・大谷地貝塚から出土した珍しい完体の一品(特別展示)。「土偶」として展示されていたが、デザイン要素は、東北の遮光器土偶たちとほぼ同じ。これも「自分で考えてね」展示と解釈。
考えましょう。そして妄想しましょう。
他の土製品
亀形土製品は関東より以北だけ、「鼻の曲がった土面」は青森県と岩手県で5例出土しただけという。
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ここまで紹介した出土品は、例外なく、考古学では「祭祀用途」とされているが、遮光器土偶は祭祀の中でも、日常的に行われた祈りの道具だったようだ。
なぜなら「亀形土製品」や「鼻曲がり面」はレア度が断然高く、それこそ特別な祈り用であるのに対し、
遮光器土偶は「絵馬」とか「かわらけ」のような印象。祈るたびに「消費する」ツールっぽい。
出土数が多いし、そのほとんどが、壊された状態で出土することが、その根拠になるのではないかと思う。
続きます(次回、壊されて埋められた神様)
北海道・北東北の縄文遺跡群
北海道・北東北の縄文遺跡群は、北海道、青森、岩手、秋田の4道県・18遺跡エリアで構成される。
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