昨日の記事で少し書いた古代の赤の顔料・ベンガラ。
原料は褐鉄鉱(かってっこう)で、簡単に言えば「天然の錆び」を多く含む褐色の粘土または鉱物。別名を「リモナイト」ともいう。
実は「褐鉄鉱」について何度か書いている(唐古・鍵遺跡、弥生の宝石箱)
褐鉄鉱は水辺の葦などが繁茂した環境で生まれる。
古代の宝石箱 あるいは 日本古代史のパンドラの箱? 唐古・鍵遺跡 より
湿地帯・水辺の葦などの根茎に生息するバクテリアが水中の鉄分(Fe、水酸化鉄)を取り込んで濃縮、数万年以上かけて堆積したもの。水辺の古代人は、広大な葦原の土中(泥中)から掘り出して、顔料(ベンガラ)や初期の古代製鉄に利用したと考えられる。(製鉄は低純度・低温溶融のため品質はよくなかった)。粘土状、板状(鬼板)、筒状(高師小僧)、空洞状などがある。唐古・鍵遺跡の宝石箱は希少な空洞状。
古阿蘇湖(火口湖)、古大和湖(潟湖)、諏訪湖(断層湖)など
列島で沖積平野が形成され始めた時、今の大都市(沿岸部。福岡、大阪、名古屋、東京など)には葦の原が広がっていて、少しは褐鉄鉱がとれたはずだ。
しかし、たかだか数千年の沿岸部よりも、古代の内陸湖(古阿蘇湖、古大和湖、諏訪湖など)の堆積は数万年以上で、大量で良質な褐鉄鉱がとれた。(弥生の宝石箱は、古大和湖からとれたもの)
中でも、約10万年前に起きた大噴火で地下の溶岩がなくなり、大規模な陥没でできた火口湖の「古阿蘇湖」は大きく、
また、その後、数万年にわたる植生の堆積で膨大な褐鉄鉱の地層を形成した結果、日本最大のリモナイトの産地となった。
(古阿蘇湖は、立野付近の断層や侵食で湖水が流れ出し消失。現在は平野になり阿蘇市の水田地帯になる)
リモナイト(阿蘇黄土)
リモナイトは阿蘇黄土と云われ、現在、土壌改良・水質改善・脱硫など、環境改善用途が主であるが、古くからウシなどの飼料への鉄分ミネラル添加剤、下痢止めとして利用されていた実績から、近年はイヌ・ネコ用のペットフードに添加されるようになった。
ペットの栄養バランスのほか、ウンチの消臭もでき、一石二鳥の効果がある。
参考までに。モンモリロナイト(酸性白土)
古代の資源として使われたかどうかはわからないが、ペットフードへの添加物として同じような粘土鉱物では「モンモリロナイト」がある。
こちらは、フォッサマグナ(糸魚川-静岡構造線)にあたる糸魚川市が主な産出地(他に山形、群馬)
ミネラルが豊富で、高い吸着性能からウンチのニオイの消臭効果の目的で添加されるが、お高め、プレミアムなペットフードに添加されることが多いようだ。
日用品としてはクレイタイプ(汚れ吸着)の洗顔料やボディーソープ、シャンプー、入浴剤など、調湿効果の高い建材にも利用されている。