前回(松下館の紹介)の続きです。
松下館の目玉は、斑鳩の中宮寺をモデルにした天平の景色でしたが、子どもの私が興味をひかれたのはタイムカプセル。
「未来に伝えたいモノ」の選定では、国内外(世界36ヵ国)の有識者に呼びかけたほか、国内で「五千年後の人類への贈り物」として12万通のアイデアを公募。その結果、自然科学・芸術・社会の三分野で2068点が収納されることになりました。
自然科学からは腕時計、小型カメラ、人工心弁、人工血管、植物の種子、避妊具、紙おむつなど、
芸術分野からは日本現代小説、わらべ歌のテープ録音、松下館の BGM に使用されたレコード盤など。
他には、ベビー服や出産届、死亡届と香典袋のほか、万博コンパニオンさんに提供された最新のメイクアップ(アイシャドウ、マニキュア、口紅、コンパクトなど)も入りました。
タイムカプセルは合計4基が制作されて、大阪万博が閉幕後、うち2基が大阪城内に埋められ、1基は100年ごとに取り出して状態を確認してから埋め戻し、もう1基は5,000年後の西暦6970年まで封印されています。
残り2基は、天守閣広場の大阪市博物館と、松下電器歴史館(現・パナソニックミュージアム、大阪府門真市大字門真)に陳列・保存されています。
超歳月を乗り越えるための最適地
タイムカプセル2基は、大阪城天守閣の中心からほぼ真南約130m、地下8~15mの粘土層に上下独立して埋設されています(パナソニックのリンク先、埋設地より)
大阪市内を南北に貫く上町台地は、縄文時代から古代まで、海(と河内湖)に囲まれた上町半島でした。
その姿は、海に浮かぶ『龍』、天守閣あたりは、ちょうどドラゴンの頭にあたります(標高も一番高い)
大阪市内で5,000年もの『超歳月』を乗り越えるには、この場所のほかに考えられません。
また、土中の腐食に耐え、温度変化に強く、磁性をもたず、切削、溶接などにも適した特殊ステンレス鋼(NTK22AT)を鋳造した『壺』型のカプセルを、松下電器生産技術研究所(当時)が設計、久保田鉄工の協力を得て製作したそうです。
リンク先「本体」のページには「特殊反転鋳造法」という特殊な製法で造られたことが紹介されていますので、興味のある方はご覧ください。
【参考】パナソニック・タイム・カプセルEXPO'70 概要
今から五千前、日本列島は縄文時代の中期。火焔土器やヒスイの大珠づくりなど、現代につながる『ものづくり日本』の基礎が出来上がりつつある時代でした。
さて、今から五千年後。。。その時代は日本人、いや、人類にとってユートピアなのか、はたまた、デストピアなのか。カプセルのフタを開けるのは。。。さすがに想像(妄想)できません。