はじめに
地元大阪の #四天王寺 は #荒陵(アラハカ)の地に建立されたことから山号は #荒陵山。そこから #アラハバキ に興味を持つように。「荒」は、古代日本では中国とは逆に「生、誕生」を意味します #多賀城 ##荒脛巾神社
目次
- 多賀城 荒脛巾神社境内 聖徳太子の碑と太子堂
- 【古代中国】「荒」=「死」。白川静博士「字統」より
- 【古代日本】「荒」=「生」。白川静博士「字訓」より
- 荒御魂(あらみたま)。神の御生れ(みあれ)の姿
- クニウミの原景=『荒』
- アラハバキ解・汎日本古代信仰の謎に迫る(2020年12月、始めました)
本文
アラハバキ神社、境内配置の謎の三回目です。
アラハバキ神社 境内配置の謎(初回)
アラハバキ神社 境内配置の謎(二回目)
593年、大阪・四天王寺は聖徳太子(上宮太子)により、難波の海のそば「アラハカ」に創建されました。
そして、遠く離れた宮城・多賀城のアラハバキ神社に残る太子信仰。
最初に見た時はビックリしましたが、今ではボンヤリとですが、理解できる気もします。
蝦夷文化とヤマト文化がぶつかった多賀城という最前線だからこそ「和」を説いた太子の思想が持ち込まれた、そのこん跡ではないでしょうか。
「荒、アラ」が両者を繋ぐキーワードです。
つまり、ヤマト政権はアラハバキ信仰を理解し、ヤマトが奉ずる信仰と蝦夷の信仰が「同根」であることを認識していた可能性があります。
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アラハバキの「アラ」には「荒」の字があてられます。
「荒」という字にはどういう意味があるのでしょうか。漢字の権威・白川静博士の『字統』『字訓』で調べてみました。
古代日本と古代中国では「生」と「死」、真逆の意味で使われていたようです。
【古代中国】「荒」=「死」。白川静博士「字統」より
『字統』は甲骨文・金文・篆文などの文字資料、いわゆる古代中国における用法・解釈に基づいて漢字の成り立ちを解説する辞書。
要約)「荒」の(草かんむりがない)下部(コウ)は死者の形で、残骨にはなお頭髪が残っている形で、それが草間に棄てられていることを「荒」という
草間の死体は、奈良時代に伝わった九相図(くそうず)として、日本では鎌倉から江戸期に仏教画として描かれたようです。ちょっとコワいですが興味がある方はググってください。
【古代日本】「荒」=「生」。白川静博士「字訓」より
『字訓』は記紀・万葉集などにみえる上代語、いわゆる古代日本での漢字の用法・解釈を解説する辞書です。
原文、一部)ある【生】生まれ出る、あらわれる。ものの生成することをいう。・・・「新」「粗」「荒」も同系の語である。類義語の「うまる」は子が生まれることであるが、「産る(ある)」は高貴な人が神意によって出生する意に用いる
用語例として。
荒御魂(あらみたま)。神の御生れ(みあれ)の姿
境外摂社、荒魂社(あらみたましゃ)の石神(シャクシ、セキジン)。
信州・諏訪では ミシャグジ様(御石神様?)と呼ばれます。
荒御魂とは、御祭神が生まれたばかり、御生れ(みあれ)の姿です。(和御魂(にぎみたま)に対応した神道の概念。ただし、和御魂は平安以降の新しい考え方のように思います)
『荒』と『石神=男性シンボル』のセットは、アラハバキ信仰のこん跡と考えてよいでしょう。
生島足島神社の御祭神 生島大神・足島大神 と同じですから、もともと境内の中心に鎮座していたと考えられます。
クニウミの原景=『荒』
大阪最古の生國魂神社(いくたまじんじゃ)も、御祭神(主神)は生島大神・足島大神。(相殿に三輪*1の大物主大神)
私は物部氏の十種神宝(とくさのかむだから)に列せられるこの男女一対の二神(生玉、足玉)を、日本のアダムとイヴ、イザナギ・イザナミのモデル と考えています。
海退(かいたい、海抜の低下)に伴う沖積(平野の発展)現象が、クニウミ神話、豊葦原中つ国(とよあしはらのなかつくに)のイメージの下敷きです。
『川』が運ぶ土砂の堆積で砂州が生まれ、水辺の生き物が棲み、エサを求める鳥が種を運び、葦やススキ『芒』の原となり地を固め、人が入り道ができ耕し、クニが生まれてゆく。。。
このクニウミの原景を、組み合わせて『荒』の一文字で表すことができます。
(日本では、荒の字の下部の三本は「水」が流れくるイメージに。生まれる、誕生、出産のイメージに繋がります。クニも同じで、クニが生まれるイメージは、神の降臨、命(みこと)の誕生に結びつけられたと思われます。八十島祭祀)
古代中国で「死」とされた『荒』が、古代日本で「生」に反転した理由はここにあると考えています。
一言でいえば、土地に恵まれた大陸文化と、平野が少なかった列島文化の根本的な違い。
(話はそれますが、古代日本人が外来の漢字を受け入れる際の姿勢がよく現れた事例です。取り入れる時は日本にあるものに合わせて使う。音読み(コウ)と訓読み(アラ)がある理由ですね)
したがって「荒」の概念を包含するアラハバキは「男女一対」「誕生」つまるところ「子孫繁栄」の信仰として、縄文海進ピーク以降の海退期のどこかの時点から、列島にひろがっていったと考える理由です。
ただ、今は、はじまりの姿から大きく変わってしまっています。
地形や遺跡との関係を考えながら、古い神社仏閣の参拝がてら、探してみませんか。
・・・たとえば、海や河口・河川が遠くなった現在の大阪市内中心に「アラ」の響きの地名は皆無。「アラハカ」は古地名で、四天王寺の山号に残るのみ。大阪人でもその山号を知る人は少ないです。
アラハバキ解・汎日本古代信仰の謎に迫る(2020年12月、始めました)
当ブログは日々のテーマで、多いときは十数話シリーズで書いていますが、どうしても書きっぱなしになりがち。そこで、2019年4月からブログを始めて、大きなテーマも見えてきたこともあり、長めのルポ風は投稿サイトで、別途、作品化することにしました。
当ブログと重複する内容もありますが、過去記事の内容と、1ブログネタにならなかったり、逆に書き切れなかった情報をあわせて再構成しております。
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