まとめ
柿本人麻呂公は #飛鳥 で最愛の奥方を失くしました。妻への哀悼歌で詠われた #大鳥の羽易の山。頭は #三輪山、#龍王山 #巻向山 が両翼の大鳥にたとえました。飛び立つ鳥を遠く眺むるところに葛城の #柿本神社 があります
目次
本文
葛城・柿本神社(かきのもとじんじゃ、葛城市柿本162)
その名の通り、御祭神は、歌聖・柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)公。
人麻呂公が御祭神の神社は、石見国(いわみのくに)の高津柿本神社(島根県益田市高津町)、柿本神社(兵庫県明石市人丸町)がありますが、葛城の柿本神社は、770年に石見国で没した人麻呂公を改葬し、社殿を創建したのが始まりとされています。
大鳥の羽易の山(おほとりのはがいのやま)
誰がなぜ改葬したのかは詳らかではありませんが、ここ(柿本)は、人麻呂公の宮仕え時代の居宅があったか、あるいは、遠く『大鳥の羽易の山(おおとりのはがひのやま)』を望む所であったことと関係がありそうです。
人麻呂公が奥方に先立たれたときの哀しみは深く、その死を悼む挽歌(長歌、巻2-210)に『大鳥の羽易の山』が詠われています。
大鳥(おほとり)の 羽易(はがひ)の山に わが恋(こ)ふる 妹(いも)は座(いま)すと 人の言へば 石根(いはね)さくみて なづみ来(こ)し 吉(よ)けくもぞなき うつせみと 思ひし妹が 玉かぎる ほのかにだにも 見えなく思へば(長歌より抜粋)
『羽易の山に恋しいあなたがおられると人の言うままに岩を踏み分けて難渋して来たがよいこともない。この世の人だと思っていたあなたが、ほのかにも見えない』
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昔の人々は、聖なる三輪山を「頭」、龍王(りゅうおう)山と巻向(まきむく)山を「翼」に見立て、今にも空に飛び立ちそうな大鳥にたとえました。
『飛鳥』の名のもとになったことは想像に難くありません。
あるいは、飛鳥の名は人麻呂公が付けたのかも知れませんね。
境内、隣接する影現寺(ようげんじ)
春楊(はるやなぎ) 葛木山に たつ雲の 立ちても坐(い)ても 妹をしそ思ふ(巻11-2453)
影現寺(ようげんじ)は柿本寺とも称され、空海の高弟・紀真済(きのしんぜい)の創建とされています。
柿本神社とともに、人麻呂の命日・4月18日にはチンポンカンポン祭が行われるそうです(葛城市HP)
「うつせみと 思ひし妹が 玉かぎる」、、、亡きひとの魂がかげろふ「影現」という意味でしょうか。人麻呂公の哀しみへの想いが深い寺名です。
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秋山に 霜降り覆(おほ)ひ 木の葉散り 年は行くとも 我れ忘れめや(巻10-2243)
『(どれだけ月日が過ぎ去ろうとも生きている限り)あなたのことを忘れることはない』