新潟県立歴史博物館・「はにわ、どぐう、かえんどきの昭和平成」(11月4日終了)より
大阪に住んでいて、この秋、新潟・富山・福島で、本場の縄文土器をはじめてまとめて見ることができた。
太陽の塔を通じてしか縄文土器を知らない初心者であるが、一応「岡本太郎さん・マザコン&直線嫌悪説(前回)」をひっさげて(笑)展示を見て回った。
前回 なんだ、コレは! 岡本太郎が博物館で縄文に出会った話(2)
新潟県の馬高式「火焔土器、かえんどき」
現在の長岡市関原町の近藤篤三郎氏が発見した縄文中期の土器(命名は考古学者・中村孝三郎氏)
燃え上がる炎をイメージさせることから、後に「火焔土器」と名付けられた。
火焔型A式1号(左)は、火焔型土器の第一号、たくさんある同じ様式を判断する際の基準、馬高式の 標識土器。
岡本太郎さんがいうようにダイナミックな造形で、思ったとおり直線表現はない。なるほど~!と見学していた。
長野県の曽利式「水煙土器、すいえんどき」
しかしアレッ?と思う土器があった。口縁部に「直線」が。
火焔型と同じ縄文中期で、並べて展示されていたが、こちらは長野県(諏訪湖エリア・八ヶ岳地方)の曽利式の 標識土器。
水煙(すいえん)渦巻文土器。
通称、水煙土器。
こちらは諏訪出身で在野の考古学者・藤森栄一氏が名付け親。
藤森氏は「となりのトトロ」のメイちゃんとサツキのお父さんのモデルと云われている(顔写真はそっくり)
また上京時代、奈良(三輪)出身で弥生時代を提唱したやはり在野の考古学者・森本六爾(もりもとろくじ)氏の仲間(記事末リンク)
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水煙の直線的造形のことを尋ねたら、展を企画した専門研究員・宮尾享さんがわざわざ出てきてくださった。
「なぜ、直線的な造形があるのか?」という要領を得ない私の質問に怪訝な表情で聞いていた宮尾さん(いきなり、そりゃそうだ笑)
こちらの質問の意図を根気よく呑み込みつつ、一枚のパネルの所に私を連れて行って説明してくださった。
● 水煙土器の平らになったフチも、最初に、頂点が4つあるウネウネと同じように造られる
● ただ水煙(曽利)式では2つの頂点を強調し、残り2つの頂点を埋めてしまうような造型
● 一見、違うようにみえる水煙土器、実は、火焔土器の様式をベースにしている、ということだった。
なるほど~っ!ウネウネした縁に、粘土を継ぎ足す感覚で平らに馴らすのか。
実用性とオリジナル性を進化させる匠の精神
私「ところでなぜ、ワザワザそうしたんでしょうね?」
宮尾さん「様式を受けいれるにも、使いやすさや特色を出したいという心理が働いたんじゃないでしょうか」と。
で、あとの例え話が面白かった。
「曽利(長野)の藤森さんも、馬高(新潟)を意識していたようで『馬高が火焔なら、こっちは水煙だ』って、名前を付けちゃったんですよ笑」
交流が生み出す、よい意味でのライバル意識。いつの時代も同じか。
縄文時代でもそういう職人気質があったんだろうなぁとシミジミ。
この後、他の見学者からも質問攻めの宮尾さん。しかし質問される以上にしゃべり出したら止まらない笑。
熱い「縄文愛、考古学愛」を感じさせてもらいました。お忙しいところありがとうございました。