ものづくりとことだまの国

縄文・弥生・古墳時代の謎。古神社、遺跡、古地名を辿り忘れられた記憶、隠された暗号を発掘する。脱線も多くご容赦ください

ものづくりで方言と標準語を創造した縄文はあらためてスゴイ!と思う【今年。北・東日本めぐりのまとめ】

昨日で、この度の「北陸・新潟・佐渡津軽・福島巡り(仕事の合間の弾丸めぐり)」で、縄文の土器・土偶については、おおよそ書き出した。

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ヒスイ(翡翠)を始めとした「古代日本海の地下資源」はまだ少し。

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大阪人の私には、目からウロコ。

漠然と日本(文化)は西から始まったと思っていた。もちろん、水田稲作弥生時代はおおむね、そうであると思う。

しかしその前の長~い時代。

縄文文化は北・東日本で華ひらき、この国の歴史に今に繋がる大きな影響を与えたと確信した

そう考えるに至った理由を、頭の整理を兼ねて、書き出しておく。

7つ目までは「文化・文明」が発達する条件。のこり2つは一応「妄想」にしておく。

古代妄想レベル:★★★=MAX ★★=MEDIUM ★=MIN or A LITTLE

● 【気候と自然条件】五千~六千年前(縄文中期)は、今より温暖で海が深く、北・東日本は住みやすかった

● 【豊富な食料と初期農耕】海と山の幸、食べものが多様でカロリーも栄養も豊富。クリやドングリなどの管理栽培(農耕)・貯蔵が普及した(藤森栄一氏、縄文農耕論)

● 【豊富な天然資源】糸井川のヒスイを頂点に石器の「分業」、石器を利用した木材加工の「分業」が発達した

● 【ものづくりの匠】分業は、縄文の匠・プロフェッショナルを生んだ

● 【8つ以上の文化圏】大珠の出土分布から、北・東日本には8つ以上の文化圏が存在した

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大珠の分布で見える縄文の文化圏 糸魚川交易ルート

● 【交易ネットワーク】日本海・丸木舟の沿岸航路、山あいを縫う内陸の道。海・陸ともに発達し文化圏をつないだ

● 【ヒトとモノの流れ】は知識や技術も運び、定住者と移動者、両方に刺激を与え続けた。活発な遺伝子交流も含む(´▽`)

● 【定住と移動】定住は主に女性、移動は主に男性(小竹貝塚・男性人骨が多い理由、土器造りが女性の理由)★

● 【母系制社会】定住と移動の男女の社会スタイルが、中世(戦国時代あたり)まで続く母系制社会を生み出した(戸主が女性、旦那は通い)★

今回、特に目からウロコだったのが「長いものづくりの歴史と匠の精神」

縄文土器、木造物(舟づくりを含む)、ヒスイ大珠(たいしゅ)。

他にも「漆」や「朱」などあると思うが、私の脳ミソ容量の問題で、今のところこの3つ。

縄文中期以降の北・東日本文化を代表する「モノ」には、それぞれに職人気質の匠(たくみ)がいたことは間違いない。

現代人が機械・工具や電力を使わず、当時の素材と道具だけで同じモノを造れと云われても、再現はほとんど難しい「熟練」が必要なものばかり。

匠は道具や材料に精通し、また、道具を造る匠と連携が必要。

木造建築物やヒスイ大珠は、集団分業体制(地場産業のスタイル、ヨーロッパでいうところのギルド)がないと不可能だ。

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距離 ✖️ 様式の縄文法則(範囲が広がるほどモノはシンプル化に向かう)

縄文土器とヒスイ大珠を比べてみるとよくわかる。どちらも縄文中期の文化が生み出したモノ。

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縄文土器、ヒスイ大珠

まるで方言と標準語のよう

前回、新潟(信濃川中流域)・火焔土器と、長野(八ヶ岳山麓域)・水煙土器のことを書いたが、ひとつの文化圏にとどまるものは、それぞれに「個性」が強い。

(二つの文化圏は上の地図を参照してください)

ところがヒスイ大珠は違う。形や大きさはほぼ同じで、孔の位置や数が違うだけになる。

縄文中期に北・東日本のすべての文化圏に広がった大珠は、個性(方言)を削いでいって「誰もが同じイメージをいだけるように」単純化していった。

(世界的に見ても、宗教的なシンボル、例えば、十字架(cross)もそう。現在の企業・ブランドロゴも結局、同じ。)

方言と標準語。両方を同時期に創りだした縄文のものづくり文化、いや、もしかすると縄文文明はスゴイ!と言うほかない。

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新潟県立歴史博物館 常設展示パネル