はじめに
母子ともに健全な出産は、哺乳類である人類の古今東西共通した祈り。火と灯りをイメージさせる #釣手土器(#香炉形土器)はその造形物かも #八ヶ岳美術館 #井戸尻考古館 #縄文のメドゥーサ
目次
本文
八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館)の火の女神フゥーちゃん
(35.96878803224286, 138.27654450559763)/長野県諏訪郡原村17217−1611/駐車場あり(バス電車等のアクセスはこちら参照)
八ヶ岳美術館は、原村の歴史民俗資料館を兼ねており、縄文時代の出土品も展示されています(写真撮影は一部OK)
撮影OKだったのが、愛称 火の女神フゥーちゃん こと、前尾根遺跡から出土した 顔面装飾付き釣手土器(縄文中期、長野県宝指定)
人型の顔がある方がオモテになります。
釣手土器あるいは香炉型土器とは
釣手土器・香炉型土器は八ヶ岳山麓~諏訪〜信州(長野~中部高地)では縄文時代中期(4500~5500年前)、関東や東北では縄文時代後期に作られました。
参考に 阿久遺跡 を見学した時、原村のスタッフさんからいただいた資料をアップしておきます。
見た目、花カゴのような…鉢型の胴体に釣り手がついた土器の様式をまとめて釣手土器あるいは香炉型土器と呼んでいます。
資料より)大きな集落の中でも、釣手土器が出土する住居は20-30軒に1,2軒ほど。完形に近い状態で発見されることも多く*1、中には内部で火を灯したこん跡(煤や加熱の痕など)が残るものもある ことから、「集落の中でも、所有する住居が決まっていた(限られていた)のではないか」「ランプのように火を灯して、祭祀(お祈りやまじない)に使われたのではないか」等、日常使用とは少し違う、特別な土器だったと考えられています。縄文の人々はこの土器にどんな祈りを込めたのでしょうか。
井戸尻考古館 香炉型土器の展示
ユニークな縄文解説の井戸尻考古館(富士見町)では、香炉型土器として、曽利遺跡から出土したものを展示しています
館内では香炉型土器だけ撮影禁止のため、参考に原村のパンフレットから(画像編集したものを再掲)
「縄文のメドゥーサ(田中基氏)」で紹介され、よく知られています(上段の人面は推定復元)
井戸尻考古館では、日本神話と関連させて考察。
上段前面を伊邪那美命(いざなみのみこと)、後面を黄泉(よみ)の国の伊邪那美命、
下段前面を火の迦具土神(ほのかぐつちのかみ)または火産霊(ほむすび)、後面を大山祇(おおやまつみ)と紹介しています。
こういう解釈は面白いですね。
ただあまりにユニークなので、どう受け止めるかは見た人次第😀
女性イメージからの妄想…産室と出産と共助社会
黄泉の国のイザナミ…火の女神・フゥーちゃん…いずれにしても、先人らは 火と女神のイメージ を描いています。
私は、釣手土器(香炉型土器)は 産室の竪穴住居 に置かれたものと妄想しています。
出産において火(種)は明るさとともに、かまどで産湯を暖めるのに欠かせませんから。
縄文中期(中部高地〜日本海側)、 男性(青年)は移動型社会、女性は定住型母系制の共助社会 と考えていて、母系制の集落単位で、子孫を繋ぐこと(生殖と出産)に、現代人が想像する以上にエネルギーを注いだものと推理しています。
例えば、出産において、新生児ひとりひとりを無事に、この世に導く 助産(産婆) は、彼女たちの集落 にとって祭祀に匹敵する、いや、それ以上に切実な 共助行為 ではなかったかと。
*****
井戸尻考古館のイザナミ(母)とカグツチ(子)の解釈は「出産と母体の死」をテーマとした日本神話に基づきますから、心象としてはそれほど「遠くない」解釈に思えます。
母子ともに健全な出産は、哺乳類である人類の、古今東西共通した祈りであります。