きのうアップした図を少し説明すると、製鉄法は「直接製鉄法」と「間接製鉄法」に分けることができる。
直接製鉄法(たたら製鉄、インド・中東、日本)
タタラを含む直接製鉄法では、取り出したケラ(鉧)やズク(銑)をいったん冷やし、目利きと手作業(割り作業)で分別してから鍛冶でトンテンカン(鍛造、たんぞう)する。ケラから採れる最上級のグレードの鉄が玉鋼(たまはがね)と云われる。
(タタラ操業で、最初に炉の外に流れ出てくるものがズク。最後にタタラ炉の中で固まったものがケラ)
トンテンカンと叩くことで、鉄に含まれる炭素や不純物が「絞り出され」て、目的とする道具に合った硬さや鋭さ、逆に柔らかさなどの物性を持たせると同時に、加工成型も進めることになる。ただし、すべての工程で相当の熟練が必要。
お気づきになったかも知れないが、タタラ製鉄は操業温度が低く(近世たたらでも1200℃台)、固形・半固形の状態での鍛冶仕事となる。
鋳型に流し込む青銅器とは、作り方がまったく異なる。
間接製鉄法(鋳物製鉄、古代中国)
古代中国(漢)で開発された方法で、いったんつくり置きした銑鉄を、もう一度、ドロドロに溶かして、魔女のスープのごとく、かく拌する。
銑鉄を経由する(間接的な)作り方なので、間接製鉄法という。
かく拌作業で、鉄に含まれる炭素を気体化して追い出す。
精錬温度が高い一方、液体になった鉄を扱うので、比較的効率よく純度の高い鉄をつくることができる。
解けた鉄を、鋳型に流し込んで、祖型~仕上げ工程で、目的とする道具に仕上げる。よって鋳鉄という。
青銅器と同じ作り方だ。
さて日本タタラの謎
二つの製鉄法の違いを理解しておくことはたいへん重要なことだ。
なぜなら、大陸は間接製鉄法で、日本に直接製鉄法(タタラ製鉄)を伝えたルートとしては考えにくいからだ。
タタラは、インド・中東あたりで生まれ発展した技術だが、ほぼそのまま伝来し、日本のタタラ製鉄として定着した可能性が高い。
たたら炉の操業、グレードごとの分別工程、各種グレードを組み合わせて鍛造する高度技術は、長い時間をかけた伝承と技術の蓄積、いわゆる『匠の技』が必要。
そういう観点で、大陸(半島)を経由しない「北方(ダイレクト)ルート」の存在を想定している。
(続きます)