ずいぶん前の話、去年の5月の記事で、明日香の観光ボランティアさんと話をしているうちに、貴重な書籍(非売品)を送っていただいた話を紹介したことがある。
この本にいくつかツチノコの話が書かれていたので、紹介すると書いていたことを思い出した(笑)
山の林で樹上のマムシに襲われそうになったことがあるが、さすがにツチノコに遭遇したことはない。
存在には半信半疑だが、本で紹介されている話を読んでいると、登場の仕方が『神がかっている』というか、畏れ多く、神々しさすら感じたりする。
まぁ、そのあたりは、お読みになった人それぞれの評価にお任せするとして、少し紹介させていただく。
土んこ(つちのこ)のはなし(字 上居、じょうご、123ページ)
もう二十年以上も前になると思うが、十一月初めの肌寒い昼間、家の側で大きなダンボール箱を運んでいた時、道端に何か黒くて太い棒のような物があった。何だか目がこっちを向いているように見えて、目の錯覚かなーと思いながら、近くにあった木切れを手当たり次第に投げつけたところ、そのうちの一本が当たった。
黒くて太い棒の真中から鎌首を持ち上げて、オレンジ色の腹とのど、真っ赤な舌と口の蛇だった。身体は下がペッタンコで背中が丸くなってカマボコ型だった。寒かったから動きが鈍くて助かったけど、飛びかかって来そうな迫力で、腰を抜かしそうになって、思わず蛇を見つめてしまった。危険を感じて慌てて長い金棒を取りに家に帰って、戻ってみると、その黒蛇がおらへん。耳をすますと、前方の竹やぶにそって「ズズーズズー」と何かが這っている音が聞こえてきて、そっと後をつけると「おったわ」。勇気を振りしぼって金棒を何度も地面にたたくと、急に動きが早くなって、まるで宙を飛んだみたいにビューッと十メートル位先のススンボの藪に逃げ込んでいった。
それ以来、その蛇とは出会っていない。古老の人達に話すと、子どもの頃によく田んぼや草むらで一升瓶くらいもある蛇を見かけたもんや、通称「土んこ」と言われている生き物かも知れへんなーと言っていた。
世界各地の遺跡や古墳で、大蛇や毒蛇がまるで遺跡を守っているがごとくに人々を近付けないようにしているようだと言われているけど、この黒い蛇もその任をおびて、古来より古墳を守っていた玄武みたいな「ブラックドラゴン」の変形だったんと違うのかなぁー。
伝承者ばなし つちのこの話(字 岡、110ページ)
一つ違いの従兄と、山に栗を拾いに行きました。平尾の池の下の方で栗を拾っている時です、上のほうでカサカサと音がしました。ひょっと見たら一升びんみたいなものが、サヤサヤところんできました。あの頃は山が整備されて、笹ぐらいしか無いときです。小さな笹が植わっているくぬぎ山です。そこへコロンコロンと転んできました。つちのこだと思いました。
子供だから鎌もザルも放って逃げ帰りました。何歳ぐらいだったかな。もう忘れましたが、それを聴いた親せきのおじさんが「鎌も栗も放っておいたらもったいないやんか」と放っておいた鎌や栗を取りに行ってくれました。
確かにつちのこやと思います。見た感じは象の鼻のようで、白っぽい感じでした。それがくるときには、地震の前触れのように、ゴーッと地鳴りがして。ソヨソヨと音がして、そんな話というか、そんな目に合いました。もう七十数年前の話になりますが、つちのことの出会いは、今でも鮮明に残っています。
そのおじさんの話(一部抜粋)(字 島庄、しましょう、116ページ)
(子どもたちが逃げ帰った翌日)平尾の山へ向かいました。その山には、何かが通ったと思われる草がなぎ倒された道が付いていたということでした。