昨日に続き、縄文土器のヘビの表現(蛇体文)について。
あにまるず(福島県立博物館・企画展)、ヘビゾーンの別の2つの土器をご覧いただこう(いずれも縄文中期)
どちらにも「正面」がある。
まずは、わかりやすい方から。
パネル文字起こし
W字形の波状文が突起の反対に独立して描かれる。この線の上に伸びる部分と突起が上下に重なるように目線を合わせるとヘビの頭と胴体がくっつくように見える。突起の裏側も立体的なジグザグ文様がある。
では次。難しくなる。
こちら側に土器面に巻きつくか這い上るヘビ、向こう側にフチから頭をもたげたヘビ、「正面」から二匹が合体したように見える造形だろうか。
こちら側のヘビは(フチから頭を出していないが)前回紹介した土器と似ている。
では次。
・・・うーん。修業してヘビに見えるよう、さらに縄文化しなければならない 笑
なお、この説明パネル、上段の3つの画像は山梨県笛吹市中丸の土偶を、前・横・後から撮影したもの。現在東京国立博物館所蔵で今回の展示にはなかった(と思う)
初見では、どの方向から見ても、宇宙人(オーパーツ)にしか見えない。
ただ蛇体文をトレーニングしていると何となくわかる。
縄文人のヘビ表現でクチの真ん中が上方向に裂けた表現はヘビ。
三つ指は比較できるサンプルや説明はなかったが、蛇体文とのこと。
ヘビとヒトとのブリコラージュ(つぎはぎのシンボリックイメージ)としてみれば、それほど不思議なものとは思わなくなる。
「つぎはぎ」は縄文の人々(世界的に古代人)がよくやる手法だ。
縄文中期の、少なくとも関東・甲信越には、ヘビとヒトとのかかわりを表現する土器や土偶を、物語(おそらく合体神話)として共有した信仰・文化が存在していた可能性を示唆する。
遮光器土偶について、ブリコラージュで思考実験した過去記事
月と蛇と縄文人(大島直行さん著)
少し前の書籍(2014年)だが、たいへん面白かった。
考古学をベースに縄文土器や土偶の表現を、学際的に研究・解釈する手法は、ここから始まったのだろう。そういう意味で画期的な著作だ。
縄文の人々は、大自然の中から様々な「もの・ことを読み取り表現する」能力を誰もが備えていた。
現代ではアートの領域だろうか。しかしひとりひとりの創作・オリジナル性の陰にしっかりと様式(コトバ)があるため、そうとも言い切れない。
大自然と同じく、人々の生活にとって、ヘビは毒にも薬にもなる。その両面性を生活や信仰、そしてカタチを通して教え、学ぶスタイル。
私たちが、安全で便利な生活で失ってしまいがちな感性、その感覚を取り戻すのに、縄文土器は「古代人からの教科書」かも知れない。