ものづくりとことだまの国

縄文・弥生・古墳時代の謎。古神社、遺跡、古地名を辿り忘れられた記憶、隠された暗号を発掘する。脱線も多くご容赦ください

語る縄文土器 ヘビとヒト 古代の物語 無文字時代の伝達手段【福島県立博物館】

福島県立博物館会津若松市)「あにまるず どうぶつの考古学」の3回目。

この記事で紹介する土器は、すべて縄文時代中期(5000年~4000年前)のもの。

1万年以上続いた縄文時代の中で、人口が増え、縄文文化が華ひらいた縄文中期。

火焔型土器(かえんがたどき)のように、ムラどうしの交流(交易)を通じて、地域ごとに土器の「共通化」と「多様化」が進んだ時代だ。

今回、あにまるずを見学して、土器の新しい(おそらく最新の)考古学の解釈に触れたので紹介する。

簡単に言うと、複数の土器の装飾と造形に共通性を見いだし「様式」を見いだすことで、当時の人々が、ひとつのストーリー(神話?)を共有していた考古学的な証明だ。

縄文は文字の無い時代だが、土器の装飾という手段で、地域・世代を越えて、同じイメージ、物語(ストーリー)を共有していたのだ。

東日本の考古学が、文字に代わるコミュニケーション手段として「土器の装飾」をとらえ、あたりまえのように解釈していたのには、西日本の考古学に慣れていた自分には新鮮であるとともに、ここまで進んでいるのか!?と驚かされた。

縄文土器の宝庫ならではの話だ。

ヘビとヒトが飾り付けられた縄文土器

まずは土器を二つ、見ていただきたい。

どちらも同じ様式ということで並べられていたが、初見では???だ。

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ヘビとヒトの装飾が付いた縄文土器(中期)

もう少し詳しく。

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左)中原遺跡 東京都八王子市、右)西原大塚遺跡 埼玉県志木市

どちらもヘビを指差し。対面する側にヒトの顔。

ヘビを見て驚いているのだろうか?喜んでいるのだろうか?(右側は頭切れをパネル説明で補足)

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ヘビ文様の解釈ルール

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縄文のヘビブーム

もうひとつ土器の展示。

上のルールを知っていると、先の二つの土器との共通性(様式)が見えてくる。

写真がヒト側しか撮れていなかったので図録(左)でヘビ側を補足した。

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第五中学校遺跡 東京都三鷹市

ヘビ文様のことを考古学では「蛇体文」というそうだが、最初は難しかった。

しかし何度も見ているうちに、だんだんわかってくるものだ。

縄文特有の幾何学的で神秘性のある表現から共通性を探し「ヘビ」を見いだすという執念、考古学者の慧眼にあらためて敬意を表したい。

さて、土器に「ヘビとヒトの対面」を表現して、縄文の人たちはどのような物語を伝承しようとしたのだろう。

秋の夜長、想像(妄想)してみませんか。

意外とヘビが面白かったのでもう少し続けます。