このシリーズ1回目で、葛木坐火雷神社(かつらぎいますほのいかずちじんじゃ、通称は笛吹神社)のご由緒を紹介しました。
気になっているのが、次のあたり(ご由緒の開物の現代訳より一部抜粋)
当神社は元火雷神社(火雷大神)と笛吹神社(笛吹連の祖神・天香山命)の二社であったが、延喜の制以前に合祀されました・・・火雷神は火産霊神(ひのむすびのかみ)とも火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)とも云われるが、火を主宰する神で・・・天香山命は石凝姥命(いしこりどめ)とも云い、天照皇大神が天の岩屋にこもられた時、天香山の天波波迦木(あめのははかぎ)と竹で笛をつくり吹き、また、金を掘り八咫鏡を鋳造し皇祖に奉(たてまつ)り、大御心を慰めた神のひとりとして、音楽および鐵工業の祖神であり、その大鏡は伊勢神宮の御神体とされました。
笛吹連(ふえふきのむらじ)は、金属加工、つまり銅や鉄の精錬を行う職業集団(連)で、ゆえに火の神様・カグツチを崇拝していたものと考えられます。
(なお、日本神話ではイザナミがカグツチを生んだ時に陰部に火傷を負い、最後は黄泉の国に行くのですが、カグツチはそれゆえにイザナギに殺されたことになっています)
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司馬遼太郎さんは『(笛吹は)フエフキではなく「火吹」が転訛したのだろうというのだが、どうも疑いを容れる余地がない。日本語の"hi"は上代では"fi”であり、さらに古くは"pi"であったということは国語学の常識だが、F発音で火吹というと笛吹に聞こえる。』と指摘されています(街道をゆく1、葛城みち、より)
以下。古代妄想レベル:★★★=MAX ★★=MEDIUM ★=MIN or A LITTLE
私が面白いと思ったのは、御由緒で、製鉄も精銅も、笛吹(火吹?)連という職業集団でまとめられている点。
日本では青銅器時代と鉄器時代がほぼ同時期に始まったと考えられていますが、葛木坐火雷神社のご由緒は、このあたりの経緯を考えてゆく上でのヒントになるかも知れません。
例えば、火吹は、空気を送り込んで火力を高める仕組み、その時に発する音も含めて『音楽と鐵工業の祖神』の由緒の話になっていったのではないかと妄想(★★)しています。
それがタタラの鞴(ふいご)のようなものと言えるほどの根拠や証拠は、今のところあまり見い出せていないのですが、探してゆけば、何かの『点』が見つかるような気もしています。
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神社の境内広場には、日露戦争(1904~05年)の記念として、明治四十二年(1909年)六月、明治政府から神社へ奉献された露国(ロシア)製の加農攻守城砲(キャノン砲)(石碑文より)が置かれています。
屋外で百年以上を経過した年代物ですが、サビも少なく保存がよい状態です。今でも、砲身から火を吹いて、轟音を響かせそうです。音楽にはほど遠いですが。
鐵工業の祖神に供えられた日露戦争の戦利品という意味でも置かれているのでしょうか。