ものづくりとことだまの国

縄文・弥生・古墳時代の謎。古神社、遺跡、古地名を辿り忘れられた記憶、隠された暗号を発掘する。脱線も多くご容赦ください

【アラハバキ信仰・考(5)】伊勢神宮の「荒」と「はばき」【全国に散らばる倭文と掃守、産育の祭式】

はじめに

例えば #伊勢神宮 にも #アラハバキ信仰 のこん跡。奈良県 #葛木倭文座天羽雷命神社 には助産の #掃守(かもん、蟹守)、織物の #倭文(しとり)、縁結びの男神がセットで祀られ、それらのピースを遠く多賀城 #荒脛巾神社 にはめてゆくとパズルが完成します

目次

本文

伊勢神宮の「荒」と「はばき」

荒祭宮(あらまつりのみや)

天照大御神(あまてらすおおみかみ)の荒御魂を祀る宮が内宮・正宮の西北に鎮座しています。

神宮のイラストマップ(HP)には「・・・荒御魂とは神の特別な働きをする状態、または神が現れた状態といわれています」と書かれています。

矢乃波波木神(やのははきのかみ)の社

同じく、伊勢内宮・正宮の板垣の外側、東南隅に祀られています(撮影禁止区域内)。

吉野裕子氏(民俗学者)は東南は「辰巳」の方角で、「ハハキ」は「蛇木」あるいは「竜木」、樹木を『竜蛇』に見立てた古い信仰のこん跡として考察しています(Wiki)。

(ワラヘビを御神木に巻き付ける出雲・伯耆の信仰様式に関連します。また、ヤノハハキ神は、箒(ほうき)神としてよく知られる神さまとのこと。吉野さんは実証的な鋭い視点をお持ちでよく参考にさせていただいてます。)

荒衣(あらたえ)は麻織物、和衣(にぎたえ)は絹織物

伊勢神宮は、天照大御神アマテラスオオミカミ)にお供えする食べ物(御神饌)や衣(神御衣)を自給自足するのが伝統です。

例えば、神御衣(かんみそ)は、

● 麻の「荒衣(荒妙)、あらたえ」が神麻続機殿神社(かんおみはたどのじんじゃ)、

● 絹の「和衣(和妙)、にぎたえ」が神服織機殿神社(かんはとりはたどのじんじゃ)で織られます。

*****

昨年、今上天皇大嘗祭に、麻の織物 「麁服(あらたえ)」と、絹の織物 「繒服(にぎたえ)」が登場したのは記憶に新しいところです。

大嘗祭のものは伝統的に、麁服(あらたえ)は阿波国徳島県)、繒服(にぎたえ)は三河国(愛知県)で織られるそうです。

葛木倭文座天羽雷命神社(奈良県葛城市加守)

かつらき・しとりにいます・あめのはいかづちのみこと・じんじゃ。

私が参拝した中では27文字の最長名で、地元では「加守神社」と呼ばれる式内社です。

御由緒より、ポイントを整理しておきました(詳しくはリンク記事で)

● 倭文(しとり)と掃守(かもん)の要素がセットになった神社で、トータルで『助産と産育』の神社

● 伊勢・駿河・伊豆・甲斐・近江・上野・丹後・但馬・因幡伯耆など全国に散在(していた)

● 一例として、淡路島南部に、シトオリ倭文、隣にカモリ掃守という地区、地名が残っている(読者さんからの情報)

● 倭文は文布(しずり、あやぬの)。子孫は倭文氏とし、諸国に機綴(はたつづり)と裁縫の術を伝えた

● 掃守(かもん)は、産室を建て箒を造り蟹を掃(はら)う蟹守が語源。蟹とは産後に排出される胎盤のこと。よって蟹守・加守・掃守は助産と祓いの意

● 境内摂社の葛木二上神社は男神(建御雷神、大國御魂神)。文と武の神、縁結びの神

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葛木倭文座天羽雷命神社 蟹守の紋

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葛木倭文座天羽雷命神社 御由緒

多賀城 荒脛巾神社 境内図

「葛木倭文座天羽雷命神社」を頭に入れて「多賀城・荒脛巾神社」の境内図を見ると、その複雑な配置・奉納物の謎が解けてきます。

要素に分解してピースを組みなおすと、二社の間に、共通した祭式 がみえてきます。

(=の左側が葛木倭文座天羽雷命神社、=の右側が多賀城・荒脛巾神社)

● 掃守(蟹守)は箒で蟹(胎盤)を掃う = 脛巾(はばき)【助産の箒が履物に変化】

● 倭文は機綴(はたつづり)と裁縫*1 = 養蚕神社とハサミの奉納物

● 葛木二上男神)の縁結び*2 = 道祖神と男性シンボルの奉納物

● 掃守(蟹守)+倭文で「産育」+縁結び = 荒脛巾

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多賀城 荒脛巾神社 境内図

岩木山神社青森県弘前市狛犬の気になる紋

蟹守の紋を見ていたので、岩木山神社青森県弘前市)の拝殿前の狛犬の基壇に刻まれたカニ?の御紋が気になり撮影(蟹守の紋)

蟹守の紋はなぜか花や葉っぱの組み合わせでデザインされていることが多く、分かりにくい場合(蓮台の紋など)がありますが、この紋は分かりやすいですね。

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岩木山神社青森県弘前市狛犬(阿形)基壇の御紋は蟹守?

となれば、こちらは金太郎さんが着ているような、童の腹掛けにも見えます(倭文の紋?)

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岩木山神社青森県弘前市狛犬(吽形)

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葛城地方でよくみられる注連縄(箒のようにはばいてます。あれは何ていう名でしょうか?)

アラハバキ解・汎日本古代信仰の謎に迫る(2020年12月、始めました)

当ブログは日々のテーマで、多いときは十数話シリーズで書いていますが、どうしても書きっぱなしになりがち。そこで、2019年4月からブログを始めて、大きなテーマも見えてきたこともあり、長めのルポ風は投稿サイトで、別途、作品化することにしました。

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*1:おくるみ

*2:大和二上山(にじょうざん)は雄岳と雌岳の二峰