はじめに
前回紹介したインドの天地創世神話 #乳海攪拌。読み返すほどに、日本はもちろん、ヨーロッパにまで繋がる点と線が次々とあらわれてきます。本日はちょっと寄り道の話。#ゾロアスター教 #バラモン教 #ヒンドゥー教 #神と悪魔
目次
本文
神にも悪魔にもなる話
現在のイラク南部に勃興したアーリア人は、紀元前10数世紀ごろに、現在のイラン~インドに移動してゆきます。
彼らは司祭階層をトップにした多神教を特徴として、自然現象を神格化し崇拝する宗教社会を各地に根付かせました。
主に イラン地域でゾロアスター教(拝火教)、インド地域でバラモン教 の社会をつくります。
(ゾロアスター教はインドにも入ります。バラモン教は反勢力としての仏教やジャイナ教を生みながら、やがて自身はヒンドゥー教に発展します)
どちらの宗教も、神々を善と悪の二つのグループに分け、その戦いの構図で歴史や自然現象を説明 します。
面白いのは、二つの宗教で善と悪を真逆に名付けている点です。
① ゾロアスター教:善神はアフラ(Ahura)、悪神はダエーワ(Daeva)
② バラモン教:善神はデーヴァ(Deva)、悪神はアスラ(Asura)
なぜ逆転したのか?勉強不足でよく理解せず書いていますが、もしかしたら、人類史の定石どおり、異教徒同士にとって「敵の神は自分たちの悪魔」という図式から来るものなのかも知れません。
(前回のヒンドゥー教の天地創世神話・乳海攪拌では「天界人」と紹介したのがデーヴァ(Deva))
ご推察の通り、ゾロアスター教のダエーワ(Daeva)は、ギリシャ語経由でラテン語のデーモン(Daemon)、西洋語のデビル(Devil、英語表記)の語源になったという説が根強いそうです。
一方、バラモン教(サンスクリット語)の善神デーヴァ(Deva)は、ラテン語で「神」を意味するデウス(Deus)の語源となったというのが通説です。
同じ神(悪魔)でも、宗教というプリズムを通すと、善悪が逆転、神にも悪魔にも、光にも影にも、なるという話でした。
なお、八百万の神々が深く浸透していた日本では『神と悪魔』という神々の対立構図は受け入れ難かったようで、アスラ(阿修羅)は、仏教守護の善神ながら、戦闘を好む悪神の面も持ち合わせた両面性のある存在として、受け入れられました。
ディーヴァ・歌姫
ラテン語では女神のことを、デウス(Deus)の女性形で「Diva」と言い、19世紀にイタリアで「オペラの歌姫」のことを指すようになったそうです。
今では、実力派の人気女性シンガーを一般的にディーバと言いますが、その言葉の背景には、宗教とかかわる長く深い歴史があるんですね。
André Rieu - Feed the Birds (Live in Amsterdam)