ものづくりとことだまの国

縄文・弥生・古墳時代の謎。古神社、遺跡、古地名を辿り忘れられた記憶、隠された暗号を発掘する。脱線も多くご容赦ください

【大宇宙の巨大な蛇】古代の天文観察とインド神話【九曜紋・考(6)】

はじめに

前回 #九曜紋 の#羅睺(らご)#計都(けいと)の正体は、古代インドの #ラーフ #ケートゥ であると紹介しました。神官(#バラモン)は日食が起きる理由を、天空の巨大な蛇神の働きとした神話を生み出しました

目次

本文

太陽と月の軌道が重なる時、日食が起きる

先日、イタリアの研究チームの、太陽(黄道)と月(白道)の軌道に基づき、前方後円墳の方位が決められているという考察を紹介しました。

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論文中で、月の軌道の理解がやっかいだったんですが、その手助けになったのが、リンクを張ったユーチューブ動画でした。

これを参考に、日食は月の軌道と太陽の軌道が重なる時(equalized standstill)に起こる と書きましたが、それはどいうことかは動画を見ると、なんとなくわかります。

全17分の動画の6分ごろに太陽と月の軌道が重なる「equalized standstill(decreasing)」、10分30秒過ぎに同「equalized standstill(increasing)」が表示されます。

(major standstill(月の大停止)とminor standstill(月の小停止)のちょうど中間という意味。equalized standstillは、日本語で「月の中間停止」というほどの訳になるでしょうか)

かんたんに言うと、

① 月と太陽の軌道が重なる「equalized standstill」の時期に

② 地球上で月と太陽が重なって見える場所で、日食が起こります

月と太陽の軌道(月の入方位をメインに表示。2000年9月~2030年9月)


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Wiki(日食)からの引用になります。地球から見たときの、太陽と月の軌道の「面」と考えてください。太陽は実際には動きませんので、地上から見たときの見かけ上の軌道面です。

日食は、太陽と月の軌道面が交差する「Ascending Node(昇交点)」と「Descending Node(降交点)」で起こります。

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地球から見た時、太陽と月の軌道が交差する点

●「Ascending Node(昇交点)」は「equalized standstill(increasing)」の時期に、

●「Descending Node(降交点)」は「equalized standstill(decreasing)」に時期に、それぞれ、あたります。

古代の天文学の話

ちなみに、昇交点・降交点の概念と理解は、現代天文学の話。地球が丸くて、宇宙空間で太陽の周りを回っていることの知識が前提になりますから。

一方で、古代の天文学者は、日食を予測するために「月の中間停止、equalized standstill」をたいへん重要視していたようです。(現代天文学では軌道計算で事足りますのであまり重要視されていません。ので私たちが学校で習うこともまずありません。)

そりゃそうですよね。古代の人たちは、宇宙(空間)とか、地球が丸いとか、地球が太陽のまわりをまわっているという知識はありませんから、常日頃から空を観察し、「観る」ことの(何百年・何千年の)積み重ねから、反復する規則性や傾向を読み取り、日食や月食の予測をしていたのでしょう。

もう奥義の世界 ですね。

古代の王が、権威をあまねく知らしめる手段として、日食を予想した日に、祈りで太陽を隠すこと以上に優れた方法はありません。王が祈るだけで世の中が真っ暗になったり、また明るくなったりするんですから、その効果は絶大。

古代文明共通で、天文を観て占う神官(司祭)を、支配者が独占しようとした歴史もうなづけます。

現在でも、天文と歴と占いが混然として存在し続けている背景には、そんな歴史があります。

日本では陰陽道陰陽師)が、まさしくその世界。

大宇宙の巨大な蛇 ラーフとケートゥ

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アーリア人の移入に伴い、紀元前1200年頃から発展したバラモン教は、司祭階級(バラモン)を最上位としたカースト制度の生みの親ですが、あまりの特権化に対して仏教やジャイナ教などの批判勢力が生まれ、やがて、これに対応するためヒンドゥー教が生まれます。

その過程においては、さまざまな神や神話が生まれるのですが、巨大蛇神のラーフとケートゥ もそのひとつです。

どれだけ巨大で壮大な蛇神かというと、上に挙げた天文図をご覧ください。

天空を取り巻く一匹の蛇神。昇交点がアタマのラーフ(羅睺、らご)、降交点がシッポのケートゥ(計都、けいと)。

(前回・シリーズ(5)で、ケートゥにあたる八将神(八王子)の一柱が「豹尾神」でしたね。)

バラモン(神官)たちは、積み重ねた天文の観察から、日食を予想し、なぜそれが起こるのかを説明するために、天空をグルグル回る一匹の巨大な蛇神の存在を考え、今で言うところの学説に相当する、神話を生み出したのでした。(続く)

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