有名な遮光器土偶(東京国立博物館所蔵、国重要文化財)
誰でも知っている左脚のないシャコちゃん(写真はつがる市特製のクリアフォルダより)
奇妙なスリット目は宇宙人説もあるが(笑)、『北極地域で生活するエスキモーの雪用めがねであると見るのが妥当』とした明治期の考古学者・坪井正五郎氏の見解以来、遮光器土偶と命名され、今はシャコちゃんの名で親しまれている。
なお、資料室には東京国立博物館と同じ様式で黒い、しかし、それよりもやや古い年代に制作された『首のない遮光器土偶』も展示されている。
亀ケ岡遺跡出土の土偶(亀ヶ岡考古資料室、地元の個人所蔵展示品)
資料室でいただいた資料には(同じ縄文時代晩期(3000~2300年前)の亀ヶ岡遺跡から出土した土偶で)『有名な遮光器土偶よりも後の年代のものです。』
また『顔の表現は、遮光器土偶のようなデフォルメされたものとは違い、やや写実的(人間の顔的)です。』と書かれている。
もともと亀ヶ岡式らしい中空。ボディ前部は残っていないが、腕に施された紋様から遮光器土偶と同じ様式だと考えてよいだろう。
ただ遮光器土偶ほど黒くない。(黒いのは、粘土中の鉄分と焼成条件によるものと思うが、今のところ確認していないので、製法も含めていずれ確認したいと思う。)
さてこの土偶を横から撮影した写真。
説明シートでは『やや写実的』と控えめに表現されているが、横から見る表情のリアルさは「やや」どころではない。
落ちくぼんで、薄く開いたようにも見える目、口。顔のシワ。
遮光器土偶のスリット目が表現していること。
資料室の土偶を見れば、現代の私たちでも理解できる。
永遠の眠りについた人(女性?)の顔。デスマスクだ
【点と線】スリット目の解釈で変わる亀ヶ岡文化の考察
亀ケ岡遺跡(縄文時代晩期の方、3000~2300年前)は『遮光器』の名のゆえに、また盗掘が多く遺跡が荒らされてきた点で、考察が十分でなかったように思う。
もし、いや、ほぼ、デスマスクが正しい解釈であるなら、見えなかった『点』がたくさんあらわれ、繋がる『線』も多くなる。
例えば、縄文遺跡の多くから出土する土偶と、それが土中に埋納される意味。
例えば、デフォルメされた象徴的なものから、写実的なものを、古代人の集団が受け入れる精神世界の大変化。。。など
資料室のこの土偶を、そういったことを考える貴重な手掛かりという意味で、一級品の遺物だと考えている。(続きます)